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福岡地方裁判所飯塚支部 昭和44年(ワ)179号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕運転者高山の過失及び免責の主張について

被告会社は加害車の運転者高山の無過失ひいては免責の抗弁を主張するのでこの点につき判断するに、本件事故現場は国道二〇〇号線(幅員七・八米)と県道とがT字型に交差する信号機の設置されてない見透しの良い交差点内であり、同交差点の県道側には交差点に進入する車両に対して一時停止の道路標識が設置されていた事実については当事者間に争いがなく、また<証拠>によれば、次の事実が認定できる。

(1) 本件三差路は県道側幅員五・六米と国道側七・八米の異幅員の道路が交差するもので、右国道を西進(加害車の進路)する車両からの県道方向(左側)の見透しは、交差点東南角付近にあるドライブイン及び県道端に密生していた雑草のため、同交差点から約五〇米以遠は悪いが、その他は比較的見透しのよい交差点であつた。同交差点の交通量も国道を直進する車両及び国道から県道側へ左折する車両が多く、県道から国道へ右折する車(被害車が該当する)は比較的閑散であつた。また県道上の一時停止の標識は交差点中央から約二五米の地点に設置されていた。

(2) 事故当時は小雨で、加害車もワイパーを作動して運行しており、道路も湿潤な状態であつた。

(3) 高山は加害車を運転し、やや下り勾配の国道を西進して右交差点中央から約六〇米手前の地点に差しかかつた時、同交差点中央から約三五米南の県道上を時速約五〇粁で交差点に進行して来る被害車を発見した。同時に高山は被害車がかなりの速度を出していること及びその運転者が前屈みの状態であることをもその際認めた。しかし高山は右一時停止の標識の存在を知つていたこともあつて、右時点では何らの措置もとらないまま被害車を観察しながら約二〇米進行し、その時点に至つて、被害車が減速することなく一時停止の地点を通過し、そのまま交差点に進入せんとするのを認めて初めて危険を感じ、急制動の措置をとると共にハンドルを右に切つて接触を回避しようとしたが既に遅く、同交差点内の国道中央線を超えた進路右側部分において、ほぼ同時に右折すべく交差点に進入して来た被害車の右側部に自車前部を衝突させ、もつて本件事故を生ぜしめた。

以上認定の事実によれば、本件事故は交差点における出合頭の衝突事故であるところ、加害車は明らかに広い道路の直進車である一方、被害車は交差点手前に一時停止の標識のある狭路を進行して来た右折車である。従つて、加害車を運転する高山には比較的見透しのよい本件交差点を通過するに際し、特段の事情なき限り狭路からの進入車両に備えて徐行義務なきこと被告の主張するとおりである。しかしながら、他方本件においては、高山が最初に被害車を発見したのは同車が既に右一時停止標識の設置地点から約一〇米、交差点中央からは約三五米の地点まで迫つて来た時点であり、しかも同車がかなりの速度であることも認識したというのであるから、高山にとつては、たとえ自から右停止の標識ある事実を知了していたとしても、被告車の右速度、距離関係ならびに道路の湿潤の状況に照せば、被害車が右標識設置付近で一時停止の措置をとらないであろうこと又は右措置に出ても右付近での停止には既に遅きに失し、場合によつてはそのまま交差点に進入し自己の進路に影響を及ぼすかも知れないであろうことを十分予測できる状況下にあつたことが推認されるのである。そうすれば本件は、高山において、被害車が一時停止を無視し、交通法規に違反する運転行為にまさに出んとしており、そのまま進行すれば交差点に進入し、同時に進入する自車と衝突する等の結果発生が容易に認識しえる具体的状況下にあつたものといえる場合であるから、高山には、前記の優先通行権があるとはいえ、右状況下に交差点に向け進行して来る被害車を発見後直ちに右衝突等の危険発生を予測し、素早く減速ないし急制動の措置に出るなどしてその結果回避の措置に出る義務があつたものというべきである。然るに高山は被害車が一時停止をしてくれるものと軽信し、右注意義務を尽さず漫然と進行し、交差点直近に至り初めて危険を感じて右回避措置をとつたが既に遅く、同時に交差点に進入して来た被害車と衝突したというのであるから、本件事故の発生について高山にも過失あるものといわざるをえない。右の次第であるから被告主張の信頼の原則を適用するに相当な事案ではない。

なお、原告は、高山が左ハンドルをとれば結果回避しえたに拘らず、右ハンドルをとつたため本件事故を惹起したもので、この点にも高山に過失ある旨主張するが、前認定の本件具体的交通状況の下において、左ハンドルを切れば、結果を回避しえたものとは必ずしも認めがたいし、又道路左側に設置された電柱や地蔵等に衝突する危険もあるのみならず、本件の如く左方から急迫して来る危険に対し、とつさに危険の迫る同方向に向け左ハンドルを切ることを期待することは瞬時の事であり困難というべく、右は本件事故と因果関係ある過失とはいえない。またそのまま直進しても本件衝突を回避しえたとも断じえない。

以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、被告会社の責任は免れず、免責の抗弁は採用の限りでない。

過失割合

前段認定のとおり、本件においては被害車の運転者亡深町秀晴にも交通整理の行われてない見透しも良い三差路において、一時停止の標識さえ設置されている狭路から広路へ右折するに際し、右標識を無視して一時停止しなかつたのみならず、交差道路右側の安全確認を怠たり、かなりの速度で右折進行した過失が認められる。右秀晴の過失と前記高山の過失とを勘案するとき、その過失割合は高山二、秀晴八と認めるのが相当である。

(川本隆)

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